コバンザメちゃん フロイド。 二年 ○組 コバンザメ (ページ8)

小説

コバンザメちゃん フロイド

小説 ナノ 「げっ。 」 つい口から出た声に素早く反応したラギー先輩が大きな声で自分の名前を呼んでくる。 やめてください注目されるじゃないですか。 ああみんながこっちをみてるやめてくれ! 奇遇じゃないっスかこれから昼ごはんすか? なんてわかりきったことを訪ねてくるラギー先輩から逃げようと後ろを向くとさっきまでそこにいたはずのいつも一緒に食事をとっている友人たちの姿が忽然と消えている。 は? あいつら逃げやがったちくしょう。 グリムまでいつの間にかいなくなっているし、完全に孤立した、敵前逃亡不可能だ。 別にラギー先輩が嫌いなわけではない。 むしろ割と仲良くやっているほうだと思うし、向こうもそう思っていると思う、いや知らんけど。 ただ、なにせラギー先輩が自分を呼ぶときは大抵、いや100パーセントの確率で面倒ごとがあるときで、どうせ今日だってレオア先輩に面倒なことを頼まれているんだろう。 頼まれてというか命令されてというか、まあラギー先輩はラギー先輩で利己的にやってるから持ちつ持たれつなのか。 どちらにしろ自分には関係ないか。 関係、ないことにしておきたいんだけどな。 はあ、と吐いた溜息は敏感に察知されてなにか文句でもあるんスかと微笑まれる。 「実はまーたレオナさんに昼飯買ってくるように言われてるんスけど、これから並ぶところっすスね?」 「嫌です。 」 「まだなにも言ってないっスよ。 でも理解が早くて助かるっス!」 ぐいっと無理やり握らされたお金を拒否したくて押し返そうとするが完全に力で負けている。 くそっ力強いなちくしょう! 早くしないとレオナさんが不機嫌になっちゃうっスよー、なんて急に他人事のように言ってくるもんだから諦めて列へと並ぶために歩き出す。 ラギー・ブッチ今に見てろよ! の捨て台詞も忘れない。 無視されたけど。 ちくしょう! 人ごみかきわけ言われたパンを手に取って必死に会計を済ませてから、自分の分を買い忘れたことに気が付いた。 しょうがないじゃないかだって言われたパンの量が多すぎて忘れなようにするだけでも大変だったんだ。 確かに物覚えは悪いほうかもしれないけれどそれとこれとは別だと思う。 ちらりと振り向けば減らない人ごみ。 もう一度あそこに並んで買いなおすのか、最悪だもう。 ため息ついてもう一度向かおうとすればどうしたんスか。 と後ろから声を掛けられる。 振り向けば涼しい顔したラギー先輩が立っていた。 あんたなに涼しい顔してんだこっちはボロボロなんですよ! そう口に出しながら注文されたパンを渡すとアンタの分はないんすかと尋ねられるから買い忘れましたと答えた。 笑われた。 めちゃくちゃに笑われた。 大体そもそもレオナ先輩どんだけ食べるんですか! 言ってからはっとする。 もしかして、もしかしてあんた自分の分も頼みましたね! バッと顔を上げるとラギー先輩がにやりと笑っていた。 してやられたどちくしょう! 「よかったら昼飯作ってやっても良いっスよ。 」 「えっ、本当ですか。 」 「3000マドルプラス材料で受け付けるっス。 」 「いりませんよ!」 ばーかばーか! 叫びながら再び人ごみへと走りだそうとして、危ないから早歩きにした。 後ろから笑い声が聞こえるが聞かないふりをする。 二度目、必死にかき分けた人ごみの先は無情にも大したパンは残っておらず売れ残ったミニあんぱんを手に悲しみに暮れてラギー先輩がいたところへと戻れば先輩はとうにいなくなっていた。 今に見てろよ。 侘しい昼食を終え、薄情な友人達と合流して迎える午後の授業は眠たくて仕方がない。 眠らないように必死に努力したって昼下がりの陽だまりの前では無力だ。 ほら、魔法も使えないんだから太陽に抗えるはずがないわけで。 左右を見ればエースもデュースもグリムも寝ていて、だからまあ、結局自分も抗うことを諦めてしまう。 うつらうつら、意識を手放した瞬間、どうやら正しくは結構時間が経っていたようだけど、トレイン先生の咳払いが近くで聞こえた。 目を開ければ目の前に立つトレイン先生がもう一度、大きく咳払いをしたあ、これ怒られるやつ。 まあ当たり前のように注意を受けて教材の片づけを命じられてなんとか終わらせれば他の生徒はとっくにいなくなっていた。 途中でお前のせいだと責任の押し付け合いを始めたエースとデュース、グリムをなだめつつ三人のせいだと責任転嫁したりしていたら遅くなってしまった。 最終的にトレイン先生が立っていたのは自分の前だったんだから自分が悪いといわれた。 解せない、みんなが悪いってことにすべきだと思う。 教室を出ればあたりに人がおらず夕飯の時間には随分出遅れてしまって、昼も大したもの食べられなかったし夕飯は良いものを食べたかったのにとため息をついてしまう。 「あー、小エビちゃんなにしてんの。 」 廊下の向こう側から聞こえた声、びくりとしてしまったのがバレたのだろう。 フロイド先輩が機嫌悪そうに近づいてくる。 機嫌が悪いなら声かけてこなければ良いのに、なんていえばきっともっと怒られる。 学園内でもトップクラスに面倒な先輩に絡まれてしまった。 今日は厄日だと思いつつ今度こそは逃がさないぞとグリムを抱きしめる。 今逃げようとしたのわかってるからね。 エースとデュースも流石に目の前で逃げるほど馬鹿ではないらしく諦めたように立ちすくんで顔をそらしている。 まって一緒にお話ししよ。 自分だけに任せようとしないで。 エースほら部活同じでしょ、デュースもグリムも一緒にイソギンチャクになったでしょ、ね。 ダメだこいつら全くこっちを向いてくれない。 「なになに? どこ行くのー?」 「これから夕飯に行こうと思いました。 」 「えー、ラウンジくれば?」 「今お金なくて……。 」 これは本当のことだった、正しくは今だけじゃなくいつだってお金はない。 悲しい。 えー良いじゃん別に。 フロイド先輩が更に不機嫌そうになるので、どうしたものか必死に考える。 ねえお願いだから三人とももっと助けて。 考えていたら、ふいに目の端に映った人物。 ちらりとこちらを見てかかわらないように逃げようとしている人物。 「ラギー先輩ーーーー!! ラギー先輩すみませんラギー先輩!!」 大きな声で、それはもう大きな声で名前を呼べば、げっ。 と嫌そうな顔してラギー先輩がこちらを向いたので、大きな声で再度名前を呼んだ。 なんスか、と聞こえた声が小さかったのは距離だけの問題じゃないだろう。 フロイド先輩がコバンザメちゃんじゃーん、なにしてんの。 と、興味をラギー先輩へと移したのを確認してそっと歩き出す。 見つかる前に逃げるが勝ち。 夕飯を食べたいんだ、お腹が空いているんだ。 あと昼食の時の仕返しだ。 後に見ていてくれたなラギー・ブッチ。 逃げ出すことに成功して悠々と食事をとる自分の前に座った、どうやらなんとか解放されたらしいラギー先輩の恨み節を聞き流しながら食べるパスタは大層美味しいものだった。 うーん美味。 そんな、嫌がらせしたりされたりのような関係をラギー先輩と続けていたら周りからの評価は知らぬ間にいつも一緒に遊んでいる仲がいい先輩後輩になっていた。 解せない。 こんなに犬猿の仲なのに。 ラギー先輩が犬だ。 ハイエナだし。 「ハイエナは犬じゃないっス。 」 「知ってますよ、馬鹿にしてますか?」 「逆に馬鹿じゃないときあったんスか?」 「しっつれいだなあ!」 まったくもうと歩くのを早めてもすぐに追いつかれてしまう。 そもそもなんでラギー先輩と二人で購買部に向かっているのかといえばグリムがエース達と遊んでいる間にと食材の買い出しに向かおうとしたところをラギー先輩に見つかったからで、そのラギー先輩はいつも通りにレオナ先輩のご要望により大量の買い出しを頼まれたらしい。 後輩とか連れてくればいいのになんやかんや一人で来なそうとするところはラギー先輩もわりと苦労性気質だな、なんて他人事のように考えつつ手伝いませんからねと先手を打って一緒に購買部に向かったわけだ。 普通にしてれば悪い人じゃないんだけどな。 と思ったのはどうやら口に出ていたらしく同意見っスよと言われた。 以前も思ったけど普通に話す分にはまあ楽しい人だと思う、面倒ごとに巻き込もうとするのさえやめてくれれば良いのに、とそれも同意見っスと返された。 また口に出ていたらしい。 購買にたどり着いて目的のものを注文していけば、自分もラギー先輩も大荷物になっていた。 買いだめにきた自分は勿論だけど、ラギー先輩の荷物も随分重そうだ。 眺めていたら殆どが食べ物だったしもしかしてパーティーでもするんだろうか。 廊下を歩きながら左手に感じるツナ缶の重さに必死に耐える。 グリムには今度からツナ缶はもう少し減らして貰おう。 それか自分で持ってもらおう。 無理か、グリムに荷物を持たせて無事ですむ未来が全く見えない。 隣を歩くラギー先輩が、重たいっスねというので本当ですねと返事をしながら早く寮についてほしいということしか考えられなかった。 「アンタ荷物めっちゃ重そうっすね。 」 「まあ重たいですよ。 ラギー先輩も重そうですけど大丈夫ですか。 」 「いやー大丈夫じゃないっスね! 思ったんスけどそんなに重たかったらもう少し荷物増えても変わんないんじゃないっスか?」 「は? ちょっ! 荷物を持たせようとしないでください重い重い!」 持っていた荷物を自分に渡そうとしてくるラギー先輩に止めてくださいと押し返しながらも力で押し負けそうになる。 いや無理無理そんなに持てないですから!必死に拒否すれば残念っスー、なんて思ってもいなさそうな。 いやむしろ本心なのかもしれない事を言いながらラギー先輩が離れて、自分が持っていたはずの左手の荷物もなくなっていた。 「ラギー先輩?」 「ん? どうかしたっすか?」 なんでもない顔で歩き出してしまったラギー先輩に荷物返してくださいと言えばなにがっスかー、と取り付く島もないものだから軽くなった荷物を手にまた隣を歩く。 もしかしてスられたのかと思ったけれどツナ缶をスる意味が分からない。 いやでもラギー先輩だしなあ。 重くないですか、尋ねればめちゃくちゃ重いっスよーと答えられた。 校舎を出て鏡舎とオンボロ寮の分かれ道にたどり着いて、ここでお別れだなとラギー先輩から自分の分の荷物を受け取ろうとしたらなぜかラギー先輩はオンボロ寮のほうへと向かっていくから、ラギー先輩道間違えてますよと声をかけてしまうけれど、ラギー先輩は間違ってないっスよとまたすました顔していて。 もしかして、もしかして、まさかもしかして本当にラギー先輩が荷物を持ってくれている? なんの見返りもなしに? いやでも、ぐるぐると考えながら歩いていればほどなくして寮にたどり着く。 「すみませんありがとうございます。 」 「なにがっスか? それにしてもいつみてもぼろいっスねー。 」 玄関の扉を開けて廊下に荷物を置いてもらうとすんなりとラギー先輩は荷物を置いてくれた。 え、なんで。 どういうこと。 正直荷物を返してくれないと思っていた。 というかいっそそうしてほしかった。 だってこれじゃあただ優しくされたみたいじゃないか。 そんなの、そんな。 「んじゃ俺はこれで。 」 ひらひらと手を振ったラギー先輩がさっさと踵を返すのに頭を下げてお礼を言ってから、しっかりといなくなったのを確認してから。 「そ、ういうところだぞラギー・ブッチ!!」 帰ってきたと気が付いたお化けトリオが驚くほどに、もしかしたらとっくに戻ったはずのラギー先輩に届いてしまうほどに大声で叫んで座り込めば、床に散らばったツナ缶が買った時よりも一つ数が減っていた。 そういうところだぞラギー・ブッチ。

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ハイエナ君と子イヌちゃん

コバンザメちゃん フロイド

カウンターに頬杖をつきながら、しっかり装丁の施された紙束をペラペラと捲る。 なまえ・ラドクリフ、17歳、ありゃ、獣人族で輝石の国出身とはまた珍しい。 ここはオクタヴィネル寮の生徒たちが経営する紳士の社交場、モストロ・ラウンジ。 そしてオレの向かいで説明をするのは、同級生でありこのレストランの支配人でもあるアズールくんだ。 そう、オレは彼にお願いをして例の転校生、なまえちゃんの情報を仕入れてもらったのだ。 初日のあの無防備な振る舞い、今後何かかしらをやらかすであろうことは火を見るよりも明らかで。 だからその前に先手を打っておこうというわけだ。 多少痛い出費ではあるけれど背に腹は代えられない。 現に、今オレの手元にはなまえちゃんの情報がぎっしり詰まったありがたい冊子が収まっている。 流石アズールくんというべきか、仕事人の彼は依頼をした翌日であるにも関わらず、完璧に情報を仕入れてきてくれていた。 というのも、どうやら彼自身も事前に編入してくる女子生徒の情報を集めていたらしいのだ。 これだけだと何だかとんでもない性癖の持ち主であるかのように聞こえるから、彼の名誉のために一応補足しておくと、彼はうちの生徒についてだったら大体の情報を持っている。 ついこの前の入学式の後だって、副寮長のジェイドくんと凶悪な笑みを浮かべて分厚いファイルを眺めていた。 あれも十中八九寮生の個人情報だろう。 それらは出身地や家族構成だけに留まらないから驚きだ。 まあ、オレなんかには探って楽しい過去なんてそうないんだけど。 まあ、要するに女の子たちの機密情報も、彼にとってはただの商売道具に過ぎないのだ。 「ふふ、それにしても編入生のお世話係とは。 あなたもつくづく大変そうですねえ。 今なら特別に友情価格で手伝って差し上げるのですが…」 「ケッコーッス!まあ、情報料を給料二日分に負けてくれたのは感謝ッスけど…」 アズールくんが胡散臭い笑みを浮かべ差し出してきた提案を丁重にお断りする。 あれはどっからどう見ても悪だくみをしている顔だ。 誰があんたの"手伝い"とやらに乗るんスかとジト目で睨むと、彼はああ残念なんて嘘くさく項垂れて見せた。 しかし、わざわざこうやって開店前の時間を縫って説明してくれるのは十分彼の優しさだと捉えていいだろう。 去年真面目に働いた甲斐があったと自分を褒めてやりたくなった。 それにしても、なまえちゃんについての記述にはいくつか引っかかる点がある。 「クルーウェル先生の紹介ってことは親戚かなんかってこと?」 「いえ、血縁関係に当たるというわけではないようです。 」 「ふーん。 前は輝石の国の魔法士養成学校に通ってたっていうのは?」 「ええ、成績はとても優秀だったそうです」 彼女が通っていたという魔法士養成学校は、俺みたいな田舎育ちのハイエナでも一度は耳にしたことがあるところだった。 別に馬鹿にしてるわけじゃないけど、あの性格で魔法士の才能があるというのは少し意外だ。 全員が当てはまるというわけではないが、優秀な魔法士は性格に一癖も二癖もあるような、言葉を選んで言うならば少し個性的、な人物が多いからだ。 まあうちの教師陣を見れば自ずと頷けるだろう。 そして家族構成の欄は不明、先月まで一人暮らし、とだけ書いてあった。 それがまたオレには予想外だった。 ああいう平和ボケした性格は両親や周りの大人たちからべたべたに甘やかされてできるものだと思っていたからだ。 家族は離れて暮らしているのか、それともいないのか。 まあ、うちに来るんだったら前者だろう。 ここの学費は名門校なだけあってそこそこ高い。 中流家庭の生徒だってバイトで金銭面を補っている奴が多いくらいだ。 スラム育ちで金のないオレなんかになると、あくせく働いてやっとぎりぎり支払えるといった感じ。 だからきっと、まあまあ裕福な家庭で遠くの魔法学校に行かせてもらってて、今回ツテを頼ってここへの紹介状を書いてもらった。 そんなところだろう。 ふと壁に掛かった時計を見るともう開店一時間前だった。 それそろオープン作業に取り掛からねばと、昨日の疲れが残ったままの重い腰を上げる。 「あのう……」 「いらっしゃいませ、大変申し訳ないのですが開店はまだ…おや」 背後から聞き覚えのある小さな声が聞こえた。 今だけは自分の無駄に聞こえの良い優秀な耳が恨めしい。 そこには渦中の彼女、なまえちゃんがいた。 「なまえちゃん、どうしてここに?!」 「こっ、ここで働かせてください!」 アルバイト募集のフライヤーを握りしめて彼女は思い切り頭を下げた。 予想だにしていなかった出来事に、オレもアズールくんも一瞬面食らってしまう。 えーっと、つまり、彼女はここでアルバイトを始めたいっていう、そういう認識でいいんだよな? オレより先に気を取り直したアズールくんが、いつもの調子で眼鏡のブリッジを押さえ彼女に向き直った。 「飲食店でのアルバイト経験はありますか?」 「はいっ!ホールとキッチン両方やったことあります!」 「長期休暇の帰省は?」 「基本校内で過ごす予定です!」 「よいでしょう、採用です」 「マジッスかアズールくん?!」 あまりの急展開にオレだけ取り残される。 こんな二言三言で採用していいものなのだろうか。 アズールくんが考えなしにこういうことをするとは思えず小声で耳元に囁く。 「えーーっと…アズールくーん。 ホントにいいんスか?」 「いい、とは?」 「アズールくんが即決するなんて、絶対なんか裏あるでしょ」 「実を言うと、なまえさんのような女子生徒には後ほど声を掛けようと思っていたんです」 「えっ、まじ?! 」 「だって、女性従業員を雇えばうちのターゲット層は更に広がるでしょう」 「あっ…そういう…」 流石アズールくん、決してタダでは転ばない男だ。 商魂たくましさで彼の右に出るものはいないのではなかろうか。 「というわけで、今日から貴女もモストロ・ラウンジの従業員です。 失礼ですがお名前をお伺いしても?」 「あっ、私ったら名前も名乗らずごめんなさい! えっと、2年に編入してきました、A組のなまえ・ラドクリフです。 よろしくおねがいします」 「ええ、こちらこそあなたに来ていただいて助かります。 私はオクタヴィネル寮長及びモストロ・ラウンジの支配人、2年C組のアズール・アーシェングロットです。 お困りの際はいつでもお声がけください」 名前どころか彼女の元住所まで把握済みの癖に、白々しく演技をするアズールくんにはもはや脱帽だ。 やっぱり彼もできるだけ敵に回したくないと強く実感した。 「ラギー君も、改めてよろしくね。 ごめんね、ここでもお世話になるかも」 「なまえちゃんもここで働くなんて意外ッス。 わかんないことあったら何でもオレに聞いちゃっていいッスよ。 」 「うん、ありがとう。 …あれ?その冊子は…」 「っあーーーーこれは部活の今年度予算案ッスよ!全くレオナさんったらめんどいこと全部オレに押し付けるんだよな〜!」 彼女がいぶかしげに手元を見てきたため慌てて背中に隠す。 我ながらいささか苦しい言い訳だと思ったが、幸いにも彼女には冊子の中身までは見えなかったようだ。 へえ〜!ラギー君は何部なの?なんてのんきに流されてくれていた。 なまえちゃんの背後に笑いを堪えたアズールくんのアホ面が見える。 くっそ、後で仕返ししてやるからな。 「お時間がおありでしたらこのまま見学してみますか?」 「えっ、いいんですか?」 「はい、今日は始業前でお客様も少ないと思うので」 あーあー。 アズールくん完全にビジネスモード入っちゃったよ。 こうなった時のアズールくんはリーチ兄弟ですらなかなか止められない。 あれは何が何でも獲物を逃がすまいとしているときの目だ。 「それでは従業員用のスペースにご案内します。 ラギーさん、お店の方は任せましたよ」 「は〜〜〜い、後できっちり報酬は貰うからね〜〜」 こりゃ情報代しっかり負けてもらわないとなあ、なんて手をヒラヒラ振って考えていると。 あ、ちょっとまってください、となまえちゃんがこちらに引き返してきた。 「あのね、ラギー君」 「ん?どうしたッスか」 彼女が背伸びをして子供のようにオレの耳に口を寄せてきたので少しかがんでやる。 小さい手が耳に触れてくすぐったい。 「あとで連絡先交換しよ」 じゃあね、バイバイ!なんてぴょこぴょこと小走りで駆けていく背中を呆然と眺めた。 いや、なんで固まってんだオレ。 なんだこれ。 アズールくんとなまえちゃんはそのままバーカウンター去っていき、そこには間抜けな顔をしたハイエナ一匹、立ち尽くしていた。 「あ〜〜〜〜〜〜っ!コバンザメちゃんも今日ホールなのぉ?」 「うわっ、フロイドくん! 急にのしかからないで!重いッスよ〜〜〜」 「ぼーっとしてるコバンザメちゃんが悪いじゃん。 どしたの、顔赤くして」 「〜〜〜っ!ほら、開店準備するッスよ!」 オレは誤魔化すようにフロイドくんの腕の中から抜け出し、人気の少ないバックヤードに逃げ込んだ。 周りに誰もいないことを確認して勢いよくその場にしゃがみ込む。 うわあ、何だあれ。 両耳を折りたたむように塞いで頭を膝に抱える。 連絡先交換しよ、短い言葉が何度も頭の中をリフレインしてやまない。 ちょっとあざとすぎないか、アレ。 てかオレあざとい子苦手だし。 いや、別にあの言葉に他意がないのなんて誰が見てもわかるだろ。 何動揺しちゃってんのオレ。 さっきから頭の中で第二のオレ、第三のオレが出現して、あーでもないこーでもないといい放題だ。 こんなにペース乱されるの、オレらしくない。 「くそっ、な〜〜〜んかむかつくなあ」 大声でそうひとりごちたら、パン!と思いきり両方の頬っぺたを叩いた。 あっちが連絡先を交換したいのはなんかあった時相談するためで、オレがちょっとだけ動揺しちゃったのは健全な 元 男子校生だからってことで。 自分に強くそう言い聞かせるとオレは再びホールに歩を進めた。 遠くでフロイドくんが駄々をこねる声と、それをたしなめるジェイドくんの声が聞こえた。 [] [次#].

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ラギー・ブッチ (らぎーぶっち)とは【ピクシブ百科事典】

コバンザメちゃん フロイド

フロイドがつけたあだ名一覧 フロイドは他のキャラクターのことを 水の生き物のあだ名で呼びます。 あだ名は魚や海の生き物限定という訳ではなく、 基本的に水中で生きていればOKのようです。 監督生:小エビちゃん• グリム:アザラシちゃん• リドル:金魚ちゃん• エース:カニちゃん• デュース:サバちゃん• ケイト:ハナダイくん• トレイ:• レオナ:• ジャック:ウニちゃん• ラギー:コバンザメちゃん• アズール:アズール• ジェイド:ジェイド• カリム:ラッコちゃん• ジャミル:ウミヘビくん• ヴィル:ベタちゃん先輩• エペル:• ルーク:• イデア:ホタルイカ先輩• オルト:• マレウス:• リリア:• シルバー:• セベク:• クルーウェル:イシダイせんせい ルークがつけたあだ名一覧 フロイドほどではないにしろ 特徴的な呼び方をするのがルーク。 リドル:薔薇の君(ロア・ドゥ・ローズ)• エース:ムシュー・ハート• デュース:ムシュー・スペード• ケイト:ムシュー・マジカメ• トレイ:薔薇の騎士(シュヴァリェ)• レオナ:獅子の君(ロア・ドゥ・レオン)• ジャック:• ラギー:ムシュー・タンポポ• アズール:努力の君(ロア・ディ・フォート)• ジェイド:ムシュー・計画犯• フロイド:ムシュー・愉快犯• カリム:黄金の君(ロア・ドゥール)• ジャミル:• ヴィル:毒の君(ロア・ドゥ・ポアゾン)• エペル:ムシュー・姫林檎• イデア:自室の君(ロア・ディ・テションブ)• オルト:• マレウス:竜の君(ロア・ドゥ・ドラゴン)• リリア:ムシュー・好奇心• シルバー:• セベク:• グリム:ムシュー・毛むくじゃら• 各キャラクターの呼び方をまとめました。 トレイ:呼び捨て• カリム:呼び捨て• ヴィル:呼び捨て• マレウス:呼び捨て• リリア:呼び捨て•

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