三菱 樹脂 訴訟。 憲法判例 昭和女子大事件の概要と判決の趣旨をわかりやすく解説

三菱樹脂事件

三菱 樹脂 訴訟

以前、このブログ記事で、不正防止のために採用時のバックグラウンドチェックをすることが難しくなってきていることについて書いた際、「三菱樹脂事件」について少し触れたので、この三菱樹脂事件について詳しく検討していきたいと思います。 三菱樹脂事件は、企業が思想・信条を理由に採用を拒否することができるかについて争われた事案で、有名な憲法の教科書であれば、大抵「三菱樹脂事件」のコラムがあったりして記載されているような判例です。 そして、この三菱樹脂事件は、私人間の争いについて、憲法を適用しないということについて、のちの昭和女子大事件、日産自動車自動車事件にも影響を与えています。 もう少し具体的にいうと、三菱樹脂事件は、被告である三菱樹脂が、原告である故・高野達男氏を管理職要員とすべく 3カ月の試用期間を設けて採用し、昭和 38年 6月 25日原告に対し口頭で本採用拒否の意思表示をした事件です。 故・高野達男氏を原告として、三菱樹脂を被告として争ったため、三菱樹脂事件といったり、三菱樹脂・高野事件と言ったりします。 このブログは、労働者側というよりもむしろ企業の経営者・管理者層を対象としているため、経営者寄りの発想になりがちですので、「三菱樹脂事件」に関して、基本的には、判例と同じ考え方になります。 三菱樹脂事件をめぐる最高裁判例に対しては、いろんな学説からの反論がありますが、そのあたりはご了承ください。 三菱樹脂事件の最高裁判例は、判例データーベースで出てくるのですが、東京地方裁判所、東京高等裁判所の判例は、見当たらなかったので、 LEXのような判例検索データーベースをお持ちでない方は、京都産業大学のウエブサイトに三菱樹脂事件の判決の一部が掲載されていますので、興味がある方は合わせて参考にされるといいと思います。 三菱樹脂事件は、昭和 39年4月 27日に東京地裁によって地位を保全する仮処分が下されたのですが、結局解決に至らず、最高裁まで争われました。 三菱樹脂事件は、当初、三菱樹脂は、本採用拒否の理由を明示していませんでしたが、裁判上、 「過激な学生運動に従事したのに、会社をして、そのような事実がなかつたものと誤信させて雇傭されようとし、あえて会社に対し右事実を秘匿する虚偽の申告をして会社を欺罔し、これによつて会社に雇入れられた」 と本採用拒否の理由を明らかにしています。 これに対して、高野氏側は、 「仮に、原告が会社に対し、その主張のような虚偽の事実を申告したとしても、それは会社が、あえてしようとする学生運動に仮託した思想信条による差別待遇に対する正当な自衛手段であつたから、なんらの違法性がなく、これを理由に雇傭契約を取消し得べきいわれはない。 」 と主張していました。 以下、同じ は社会的、政治的問題につき相当の関心を有し、又川内分校学生自治会が行なつていた現実の学生運動に少くとも共鳴感を抱いて参加したものというべきである。 」 と学生運動に参加した事実を認めたうえで、 「少くとも昭和三五、六年(原告の第二学年在学前後)の過去の事実に関する限り虚偽の申告にあたるであろうが、右面接試験の行なわれた昭和三七年九月(原告の第四学年在学中)における事実につき虚偽の申告をしたものとは必ずしも、いうを得ないであろう。 」 と、被告の主張を肯定しています。 さらに、 「原告が経歴等に関してなした身上書の記載及び面接試験における回答が事実に相違し、その間に格別の悪意が介在する旨の被告の主張は理由がない。 」 としたうえで、 「原告が生協活動をなしたのは東北大学在学中の全学年にわたつた一方、学生運動に参加したのは、その第二学年在学の前後に限られていて、その後に及んだ事迹のみるべきものはない(それは学生運動に対する関心が薄れたことによらないとも限らない。 )のであるから、原告の生協活動が違法な、もしくは不当な事業に属するものであれば格別、また原告の学生運動が、その後も継続されたことを疑うに足りる事情があつたのであれば格別、さもない限り、管理職に要求される資格につき消極的資料とするに足りないものと考えるのが相当である。 したがつて、会社が前記資料だけで原告の適性を否定したのは早計にすぎ、にわかに首肯し得るものではない。 」 と結論付け高野氏側の主張を全面的に認めています。 そして、試用期間が終了し、本採用を拒否する旨の意思表示をしたことについては、 雇傭解約の申入をなしたものというべきである。 として、採用拒否というよりもむしろ雇用があったことを前提とする雇用解約という表現をしています。 これによって、三菱樹脂事件は終了するかに思われましたが、三菱樹脂側は判決を拒否し、三菱樹脂事件の舞台は東京高等裁判所に移ることになります。 高裁では、高野氏側は、「本件解雇は憲法第 14条、第 19条、労働基準法第 3条、民法第 90条に違反し、無効である。 」と主張したのに対し、 三菱樹脂側は、 「労使間の私法関係については、憲法に定める思想、良心の自由及び信教の自由の規定は適用も準用もされないし、労働基準法第 3条も労働者を採用する際には適用がない。 」 と主張していました。 これに対して、高裁は、 「人が信条によつて差別されないことは憲法第一四条、労働基準法第三条の定めるところであるが、通常の商事会社においては、新聞社、学校等特殊の政治思想的環境にあるものと異なり、特定の政治的思想、信条を有する者を雇傭することが、その思想、信条のゆえに直ちに、事業の遂行に支障をきたすとは考えられないから、その入社試験の際、応募者にその政治的思想、信条に関係のある事項を申告させることは、公序良俗に反し、許されず、応募者がこれを秘匿しても、不利益を課し得ないものと解すべきである。 」 として、商事会社の場合には、応募者に政治的思想、信条に関係のある事項を申告させることは公序良俗に反するとして、原告の主張を全面的に認めました。 さらに、労働基準法第3条の適用についても 「第一審被告の主張する詐欺による雇傭契約の取消は、当時第一審原告の持つていた従業員たる地位を喪失せしめるものであり、その実質において解雇と同一の作用を営むものというべく、従つて、その効力についても労働基準法の適用を受ける。 」 として、適用を認めたうえで、 「ところで、第一審被告の主張するところによれば、第一審原告が秘匿し、虚偽の申告をしたとされる事実はすべて第一審原告の思想、信条に関係ある事項に属するものであり、かかる事実を後日の調査によつて知り得たとして雇傭契約を取消すことは第一審原告の抱く(もしくは抱いていた)思想、信条を理由として従業員たる地位を失わしめることとなり(第一審被告は第一審原告が従業員として暴力的、反社会的活動をしたというのではない)労働基準法第三条に牴触し、その効力を生じないといわねばならない。 」 として、原告の主張通り、労働基準法に抵触して無効であることを全面的に認め、三菱樹脂事件は、高野氏側の全面勝訴になりました。 ところが、この三菱樹脂事件は、高裁判決を受け、三菱樹脂側が、大反撃に出ます。 日本国憲法の「八月革命説」で有名な宮沢俊義先生や、民事訴訟法の権威である兼子一先生や、民法の権威である我妻榮先生といったそう錚々たる面々の三菱樹脂事件に関する意見書を提出しました。 その効果があったのかどうか知れませんが、最高裁判所では、三菱樹脂側の主張が認められることになります。 高等裁判所の判決に対して、最高裁判所では、 「所論本件本採用拒否の効力に関する原審の判断には、法令の解釈、適用を誤り、その結果審理を尽さなかつた違法があり、その違法が判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は、この点において理由があり、原判決は、その余の上告理由について判断するまでもなく、破棄を免れない。 」 「そして、本件は、さらに審理する必要があるので、原審に差し戻すのが相当である。 」 として、高裁の判決を全員一致でぶった切って高裁に差し戻しています。 具体的には、憲法について、 「 国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。 」 として、憲法が国などと個人との関係を規律するものであることを明らかにするとともに、私人間については、 「 私人間の関係においては、各人の有する自由と平等の権利自体が具体的場合に相互に矛盾、対立する可能性があり、このような場合におけるその対立の調整は、近代自由社会においては、原則として私的自治に委ねられ、ただ、一方の他方に対する侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超える場合にのみ、法がこれに介入しその間の調整をはかるという建前がとられている 」 として、原則的に私的自治の原則がとられることを明らかにしている。 そして、 「 企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。 」 として、企業が思想・信条によって雇用を拒むことを認めており、労働基準法第3条についても 「 また、労働基準法三条は労働者の信条によつて賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であつて、雇入れそのものを制約する規定ではない。 」 として、全面的に会社の考え方を支持しています。 さらに、民法上も 「 思想、信条を理由とする雇入れの拒否を直ちに民法上の不法行為とすることができないことは明らかであり、その他これを公序良俗違反と解すべき根拠も見出すことはできない。 」 として民法上でも三菱樹脂側の主張を認める旨を示しています。 この結果、最高裁では、三菱樹脂事件は、三菱樹脂側の大勝利に終わりました。 〔判例に対する批判〕 もっとも、この三菱樹脂事件の判決について、憲法学者の芦部先生などは、「私人相互間の問題とはいえ、絶対的に保障される思想・信条の自由について判決のように考えるのは疑問であり、学説上も批判的な立場が有力である。 」として、批判的な立場をとっていますが、人を雇う立場になれば、思想・信条というものは非常に重要かと思います。 確かに、高裁は、「商事会社の場合」、「直ちに、事業の遂行に支障をきたすとは考えられない」と言っていますが、間違って採用しても、制度上、安易に解雇することができない以上、採用に慎重に慎重を期すのは雇用側からすれば当然の話であり、正直、実務に携わってきた身としては正直納得がいきません。 特に、この三菱樹脂事件の裁判が行われたころは、「終身雇用」が前提の時代であったため、慎重な判断をするのはごく、自然なことであったろうと思います。 例えば、私のような零細会計事務所の場合、ウマが合うか合わないかは、事務所の業績に大きな影響を与えます。 どんなに優秀であっても、お客さんのところに、スターリンやヒトラーのバッジをつけたまま仕事をしてもらうと変な誤解を生みかねません。 そのため、採用をするにあたり、思想・信条が少なからず影響していると思われます。 現実の問題としても、面接の段階でいきなり、「基本的人権を重視する立場を貫徹する観点から、私はどんなことがあっても必ず定時に帰宅します」と主張する人を採用する中小企業の経営者はまずないと思います。 もっとも、最近、大学の非常勤講師の募集要項を見る機会があったのですが、キリスト教系の大学の非常勤講師の募集要項の場合、「採用資格」の一つとして「当校のキリスト教的精神を理解していただける方」といったような一文が予め入っていたりします。 〔時代背景〕 三菱樹脂事件については、 1977年 2月に発行された、「石流れ木の葉沈む日々に」という本が非常に興味深いです。 この本は、解雇された高野氏側の立場に立って書かれた本ですが、当時の時代背景をよく表しています。 例えば、三菱樹脂事件の裁判が起こった当時、三菱樹脂は、対前年比売り上げが3倍になるような時代であり、現在のような時代と全く状況が異なりまるという点についても指摘しています。 また、高野氏側が、仮処分に勝訴した段階で、三菱樹脂側は、高野氏が独身寮に居住することを認めたり、失業保険、厚生年金、健康保険組合への加入を認めたり、会社の食堂で食事をするための食券の購入を認めたり、社内に自由に出入りする権利を認めたりしており、三菱樹脂の懐の深さを見せたりしています。 三菱樹脂側が労働組合と高野氏を切り崩し工作をすることについても触れていますが、 良くも悪くも、三菱樹脂事件当時は、牧歌的なところがまだ残っていた時代だったのでしょう。 現在、高野氏と同じようなことをしようとしたら、おそらくネットで袋叩きにされ、歴史に残る三菱樹脂事件は存在していなかったのではないでしょうか。 〔三菱樹脂と高野氏との和解条項〕 結局、三菱樹脂事件は、三菱樹脂と高野氏がその後、高野氏が復帰することを前提に和解をすることになるのですが、三菱樹脂が高野氏の職場復帰を認めていることから、三菱樹脂事件は、実質的には、高野氏側に軍配が上がったとも言えるでしょう。 和解に至った経緯について、先ほどの本には直接書いてはありませんが、いくつか推察することができます。 1.高野氏サイドが、三菱樹脂だけではなく、他の三菱グループ、三菱銀行、三菱信託銀行、三菱化成などに対する激しい抗議活動をしたことや、51パーセント親会社である三菱化成の役員宅に直接抗議活動に出かけ精神的な圧力をかけたこと 2.10年以上の長期にわたる裁判で会社側も組織体制がある程度変わり、和解を受け入れる土壌ができたこと 3.最高裁判決で差し戻されたことを受けて高野氏側も条件次第で和解を受け入れる土壌ができていたこと。 4. 基本的に裁判所は判決文を書くことがあまり好きではないため、裁判所が和解を強く勧めたこと。 などが推察されます。 そして、先ほどの本によりますと、三菱樹脂と高野氏との和解条項は以下の通りになります。 第 1項 昭和 38年 6月 28日付本採用拒否を昭和 51年 3月 1日付で撤回し、 東京支店住宅関連第三課に配属する 第 2項 復帰時の職掌は主事とし、給与は大学卒業同期入社に準ず 第3項 和解金として2500万円 第4項 復職後、労働基準法等を順守し不利益待遇を一切行わない 第5項 就労は 6月 12日 第6項 和解条項以外の労働条件は別途協議 第7項 請求の放棄 第8項 訴訟費用は各自弁 〔司法反動とは〕 ところで、三菱樹脂事件とは、直接関係ないのですが、この本で「司法反動」という言葉を初めて知りました。 Google で検索すると、約 473,000件と表示されることから、比較的メジャーな言葉であるようです。 ただ、司法反動そのものを説明したものはちょっと見当たらなかったので、 「反動」という言葉をデジタル大辞泉で調べると、 1 他に力や作用を及ぼしたときに、その反作用で押し返されること。 2 ある傾向に対抗して生じるそれと全く反対の傾向・動き。 また、その立場をとる人。 「司法反動」という言葉を使用しているサイトはある一定のこのことから、どうやら、「司法反動」とは、社会主義・革新的な立場の人が「裁判所が守旧的・極端な保守的な判決を下している。 」という批判的な意味で使用する言葉であるようです。 〔三菱樹脂事件の原告の高野達男氏のその後〕 そして、三菱樹脂事件の主役の高野達男氏はその後どうなったのかについて気になる方が多いとおもわれるので調べてみました。 札幌学院大学法学部のホームページに残っている高野達男氏の経歴によりますと、三菱樹脂の子会社で「ヒシテック」という 1999年に設立された会社で、設立時からが代表取締役社長として関与しており、 2004年 平成 16年 年 9月まで、同社の顧問をされていたようです。 そして、長期にわたる三菱樹脂事件の裁判が高野氏をどこかで蝕んだのでしょうか?それとも、三菱樹脂から離れたことにより大きな目標を失い虚脱感に襲われたのでしょうか? 真偽はともかく、高野氏は、 2005年 平成 17年 8月 22日に脳梗塞でわずか 65歳の若さで亡くなられています。 札幌学院大学法学部のホームページには、亡くなられる前の本人による三菱樹脂事件に関連した講演の動画が残っています。 憲法9条の話や、靖国神社の話など、政治的な内容も含まれており、そのような話題が嫌いな方には向いていませんが、話がうまく、人となりがよくわかる動画です。 毎日お酒を飲むお酒好きで、結局、同期の中では、最後まで三菱樹脂グループに残られたそうです。 宮沢東大名誉教授に対する恨み節や 高野氏が子会社の社長になった経緯や顧問になったについても触れられています。 〔ヒシテックという会社について〕 ところで、そうすると、ヒシテックってどういった会社なのか気になる方が多いと思いますので調べてみました。 というのは、三菱樹脂の子会社の社長になったということだけで果たして、ハッピーエンドであったということができるのか関心が高いからです。 つまり、上場会社の子会社はたくさん存在しているので、子会社のである社長と言っても、実際には、課長や部長クラスの人が子会社の社長を兼任していることはごく普通にある話だからです。 ヒシテックには、水槽部門と冷却塔部門があり、マンションや工場にあるような水槽や冷却塔の販売等を行っていたと思われます。 具体的には、三菱樹脂社製品の一部を購入販売していたり、建設資材分野の設備機器製品の販売・メンテナンスを行っていたりする会社でした。 また、東京都台東区台東に本社があり、大阪市中央区伏見町には大阪支店がありました。

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憲法判例 昭和女子大事件の概要と判決の趣旨をわかりやすく解説

三菱 樹脂 訴訟

三菱樹脂事件とは? 入社事件で身上書に学生運動を秘匿したして、本採用を拒否された原告が解雇無効を求めた事件 1963年3月に東北大学を卒業した原告は、三菱樹脂株式会社に就職予定でした。 採用試験の際に原告が「学生運動に参加したことがあるか?」という質問に対して、面接当時は否定したものの、後になって原告が60年安保闘争に参加していたことがわかりました。 原告が学生運動に参加していた事をしった三菱樹脂株式会社は原告の本採用を拒否しました。 拒否した理由は、 「本件雇用契約は詐欺によるもの」という事です。 本採用を拒否された原告は、 「三菱樹脂株式会社による本採用の拒否は思想及び良心の自由を侵害するもの」 として、雇用契約上の地位を確認する訴えを東京地方裁判所に起こしたのです。 この裁判の争点は、 日本国憲法が保障する基本的人権は私人間にも適用されるのかという点でした。 憲法が規定する基本的人権の保障は国家が個人に対して保障するものであるため、 三菱樹脂株式会社と原告という私人間の争いにおいて、思想及び良心の自由が保障されるべきかというのが論点だったのです。 いわゆる憲法の私人間効力です。 三菱樹脂事件の結果 一審の東京地方裁判所、二審の東京高等裁判所は原告の訴えを認めました。 企業の解雇権の濫用にあたるとしたのです。 特定の政治的な思想を持つものを入社させたとしても、会社の業務を遂行する上では支障がないとしていて、採用の応募者に対して、政治的思想や信条を申告させる事は許されない。 としたのです。 つまり、 そもそも面接の段階で学生運動に参加していかどうかを企業側が応募者に聞いた事がいけないという事です。 これを企業が業務を遂行する上で関係の無い質問と一審と二審は判断しました。 これを受けて、三菱樹脂株式会社は最高裁判所に上告を行いました。 最高裁判所は 憲法19条は私人間には適用されず、特定の思想、信条ゆえの採用拒否は違法にならないとしました。 憲法22条と29条で規定されている、企業側の「企業の経済活動ないし営業の自由」が勝った形になりました。 そもそも憲法19条の思想及び良心の自由は国や地方公共団体と個人の間で保障されるべき内容であって、企業と個人という私人間では適用されないという最高裁判所に判断だったのです。 今回のケースでは、 個人の基本的な自由や平等を極めて重要な法益として尊重すべきことは当然ではありますが、絶対視するものでもなく、憲法ではなく民法をはじめとする私法規定の解釈をすべきという事になりました。 特定の思想、信条ゆえの採用拒否は違法にならないって判断なんだね! まとめ この記事では三菱樹脂事件について解説しました。 三菱樹脂事件の争点は、国家が保障する基本的人権は私人間の争いにも適用されるのかという点でした。 原告は学生運動に参加していた事を企業に隠して採用されており、企業が採用拒否を行うことは違法にならないという判決でした。 三菱樹脂事件の事の顛末としては、原告は大企業と13年間も争い裁判が終わる頃には30代半ばになっていました。 その後、念願と言って良いのかは疑問ですが、三菱樹脂株式会社に復職して1999年まで23年間勤務します。 その後は三菱樹脂100%子会社のメンテナンス会社「ヒシテック」にて社長を務めるまでに出世しました。

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思想・良心の自由

三菱 樹脂 訴訟

均等待遇【三菱樹脂事件】 > > 三菱樹脂事件 事件の概要 大学卒業者の採用試験に合格して、当初の3ヶ月は試用期間として会社に採用されました。 しかし、試用期間中に、採用試験の際に、学生運動に参加していたにもかかわらず虚偽の回答をしていたことが発覚したため、会社は本採用を拒否して解雇しました。 これに対して、従業員が、本採用の拒否は思想、信条の自由を侵害するものとして、本採用の拒否(解雇)の無効を求めて提起しました。 三菱樹脂事件 判決の概要 思想、信条の自由を規定している憲法第14条や第19条は、国や公共団体と個人との関係を規律するもので、会社と個人の関係を規律するものではない。 その一方で、憲法第22条や第29条において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由を保障している。 それゆえ、会社は、経済活動の一環として契約の自由があり、どの者を雇入れるか、どのような条件で雇入れるかについて、法律その他による特別な制限がない限り、原則として自由に決定できる。 そのため、会社が、特定の思想、信条を理由として雇入れを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。 また、会社が、従業員の採否決定にあたって、その者の思想、信条を調査し、その者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、違法とは言えない。 雇用を予定している者が、企業運営の妨げとなるような行動、態度に出る恐れのある者かどうかに大きな関心を抱き、採否決定にあたってその者の性向、思想等の調査を会社が行うことは、終身雇用が行われている社会では、合理性を欠くものとは言えない。 次に、労働基準法 第3条は、従業員の信条によって賃金その他の労働条件について差別することを禁じているが、これは雇入れた後の労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制約する規定ではない。 会社は、従業員の雇入れにおいては広い範囲の自由があるけれども、一旦雇入れた後においては広い範囲の自由はない。 労働基準法 第3条は、従業員の労働条件について信条による差別な取扱いを禁止しているが、特定の信条を持っていることを解雇事由として定めることも、労働基準法 第3条でいう労働条件に関する差別な取扱いとして、違反行為と解釈される。 このことは、法律が、会社の雇用の自由について雇入れの段階と雇入れた後の段階との間に区別を設け、前者については会社の自由を広く認める反面、後者については、従業員の既得の地位と利益を重視して、その保護のために、一定の限度で会社の解雇の自由に制約を課すべきであることを示すものである。 この裁判では、憲法は、会社と従業員の関係には適用されないものとして、思想、信条を理由として、採用を拒否したとしても、原則的には違法にはならないと判断しました。 また、は、従業員の国籍、信条又は社会的身分を理由として、差別的な取扱いを禁止していますが、これは採用する前の段階では適用されないことが示されました。 つまり、採用の判断材料として思想、信条を考慮しても違法にはならないということです。 ただし、採用した後に思想、信条を理由として、解雇も含めて、差別的な取扱いをすることは許されません。 なお、この裁判では、学生運動の内容が解雇事由として正当かどうか(違法行為があったのかどうか等)という審理が十分に尽くされていないとして、高等裁判所に差し戻されました。

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